麻布という不治の病(おおたとしまさ)ですが、麻布を知りたいという理由で買うと微妙かもしれません。
ただし読み物として読む分には面白く、この本を通して教育とは何ぞやということを考えるには良書だと思います。
著者には申し訳ないのですが、麻布を簡単に知りたい場合には、
「はじめに」、「序章」、「終章」、「あとがきにかえて」
を高速で立ち読みするといいと思います。
■内容紹介
底抜けに自由なのに東大にバンバン入る内幕
東京都港区にある麻布中学校・高等学校は「自由な学校」の代名詞として知られている。制服もなければ校則もない。不文律として「授業中の出前禁止。校内での鉄下駄禁止。麻雀禁止」の3項目があるだけ。
それなのに、戦後中高一貫体制の一期生から60年以上、東大合格者数ランキングトップ10から一度も外れたことがない唯一の学校でもある(なのに一度も1位にはなっていない)「ギャップ萌え」が魅力の超進学校である。
本当の「麻布らしさ」とは何か。それを感じ取るため、各界で異彩を放つ9人の卒業生のインタビューから、「麻布病」の実態をあぶり出し、「いい学校とは何か」「いい教育とは何か」「子どもに大人は何ができるのか」といった普遍的な問いに迫る。
■麻布病【あざぶびょう】
重度の中二病による後遺症の一種。罹患者の多くには以下の点が共通している。
特長:根拠なき自信
特技:屁理屈と帳尻合わせ
チャームポイント:詰めの甘さ
以下、凡人父の適当な感想や面白いと感じた章の紹介
序章:「問題を起こしてからが教育」の心意気
こんな学校だったら楽しいんだろうなーと単純に考えてしまうのですが、真面目に勉強したい子にとってはイライラするかもなぁと思ったりもします。(そんな子はそもそも麻布を受けないか、、、)
第四章 ビル・ゲイツになれたかもしれない国際弁護士 湯浅卓
本人が相当面白い方だということが、文章から伝わってきます。
あと、普通に天才だということがよくわかります。中学入試のための勉強はせずに、本屋で参考書を立ち読みするだけとか奇人です。
宿題を出してもどうせ誰もやらないから宿題は出さないという「負の信頼感」で結ばれており、個々がバラバラであるがゆえに結果的に統一が取れれているという件が面白いですね。
全員が斜に構えていると斜め前が正面になるようです。真っすぐ前を向いている子がかわいそうですね。
第八章 オタクでコミュ障を武器にしたアナウンサー 吉田尚記
「僕みたいな凡人にとって麻布で得られた大きなものは、天才と普通にいっしょにいられたことです」
自分の物差しでは測れない天才を数人見ると(一緒に過ごすと)、価値観が変わるというのはすごく理解できます。
第九章 勝利至上主義を捨てた東大卒プロゲーマー ときど
『もし東大を出ていたら、あなたは何になりますか?』と問いたいという話があります。
別の見方をすると「子供が東大に進学したら、将来どのような職に就いてほしいですか?」と考えると、何となく自身の教育理念が見える気がします。
選択肢を広げるために東大に行ったとして、東大を出たんだからと大企業と考えるのは結果として選択肢を狭めるジレンマに陥っています。
付録三 藝大生が振り返る麻布
個人的にはこの章が一番面白かったです。
麻布の先生が藝大を勧めるあたり、良い学校だなーと思いました。
全体を通しての感想
「自由と責任」を自考する
「FREE FLAT FUN」(第六章 ミスチルを超えた!遅咲きのプレゼンの神 伊藤羊一)
あたりが麻布のエッセンスのように感じますが、本書は麻布を知るための本というよりも、麻布の教育を通して自身の教育に対する価値観を見直す一助として使用するのが良いかと思いました。
本書を読んでいて、凡人父も自分の高校時代を思い出しました。
凡人父も高校時代は麻布の例に負けない程度に自由に過ごしていました。
授業抜け出してお好み焼き、授業中麻雀、部活のみ登校、部室でマリカー(スーファミ)、飲酒、等々。
いま冷静に振り返ると多少やばい側の人間だったかもしれませんが、当時の私の周りはそれが普通でした(おそらく自由が欲しいだけなら公立の方が自由にできる学校は多いと思います。放置状態なだけですが)。
そんな人間でも博士号を取得したりで、研究職として働いているんですから人生わからないものです。
結果的には、運よく自分自身の価値観を変えるような出会いがあったというのが大きい気がするので、子供達にも良い出会いがあると良いと思っており、中高一貫校の方がそういった確率は上がるのではないかと思っています。
そういった意味では、個人の思想を大事にするような自由な学校に行ってほしいです。
願わくば父が想像もしないようなアバンギャルドな大人になってもらいたいものですね。